日本丸
1984年、日本丸は50余年にわたって海の若人を育ててきた初代日本丸の代替船として建造されました。
初代日本丸は鹿児島商船水産学校の練習船「霧島丸」の遭難を契機として、1930年に建造され、当時の田中隆三文部大臣の「日本の海の王者にふさわしい船にしたい」という我が国の海運に寄せる期待を込めて「日本丸」と命名されました。
初代日本丸は 引退までの54年余りにわたって、実習訓練を行って来ました。 正確な記録の残る昭和27年(1952年)4月1日以降でも162次の航海を行い、6,509名の実習生を育て、約127万kmの航海を完遂しました。
米国建国二百年祭(1976年)に参加するなど、華々しい航海を続けてきた初代日本丸ですが老朽化には勝てず、1974年以降は遠洋航海の規模を縮小するなどの応急的な航海を続けていました。
1981年、代船建造に関する調査を開始し、建造基本概念をまとめました。
- 初代日本丸及び海王丸を基調とし、基礎的な機関教育等も考慮する。
- 長年の運航を考慮し、堅牢と美観を備え、品位あるものとする。
- 船体強度、復原力、トリム、防音、防振、防熱等についても十分考慮する。
- 実習訓練に必要な教育設備を完備すると共に、特に心身の錬磨、慣海性等資質の養成、基本的海技の習得に最適の艤装を施す。
- 可能な限り居住環境を快適にし、健康的な船内生活を得られるように考慮する。
翌1982年に日本丸代船建造に関する予算が認められ、建造の運びとなりました。完工までの経緯は以下のとおりです。
1983年 4月11日 | 住友重機械工業追浜造船所浦賀工場で起工式を実施した。 |
1983年 9月16日 | ブロック搭載開始した。 |
1983年12月14日 | 最初のマスト(ジガーマスト、最後尾のマスト)を搭載した。 |
1984年 2月15日 | 皇太子殿下並びに皇太子妃殿下のご臨席を仰ぎ、進水式を挙行した。 |
1984年 9月16日 | 完工、引き渡し。最初の実習生を受け入れ、処女航海を開始した。 |
日本丸の帆走性能は初代日本丸のそれをはるかにしのぎ、世界でも有数の高速帆船として世界の帆船の仲間入りをしました。その年で最も帆走速力の出した帆船に贈られるボストン・ティーポットを受賞しました。
日本丸の特徴
- 帆装艤装設計から製作まで、総て一貫して我が国で行ったのは日本丸が最初である。
- 各種水槽実験・風洞実験を行い、船体線図、帆面積分布の最適化を検討し、模型により帆装性能を推定した。
- 我が国が保有した練習帆船の中で、最大である(旧日本丸との比較図参照による)。
大型化した理由は主に次のとおり。
- ・日本人の体型の大型化を考慮し、ボンク(寝台)の大きさを200mm長くし2mとした。
- ・女子実習生専用の衛生設備を設けた。
- ・最新の機関を装備し、機関教育にも対応した。
- ・空調設備を全船にわたって設けた。
- ・全通船楼甲板を採用した。これにより、甲板上における装帆作業性が改善され、凌波性が向上し、甲板下区画が広がった。
- ・マスト及びヤードを総て鋼製とした。
- ・上下可動ヤードは高張力鋼を採用し軽量化を図り、トラック方式を全面的に採用し、ヤードの昇降作業の向上を図った。
- ・ダブルスパンカー方式を採用し、スパンカー操帆作業を改善すると共に、帆走性能の向上を図った。
- ・各ヤードが船首尾に対して3点(約33度)以下まで旋回できるように艤装した。
- ・ヤードの旋回に伴う索具への無理な負荷を防ぎ、操帆作業性の向上を図るため、索具の導通に相当の改善を図った。
- ・錨作業の改善を図るため、高把駐力型無かん錨を装備した。
日本丸の仕様
船名 | 日本丸 |
航行区域 | 遠洋 |
船種 | 帆船 |
建造場所 | 住重浦賀 |
船番 | 1115 |
起工年月日 進水年月日 竣工年月日 |
(1983)昭和58年4月11日 (1984)昭和59年2月15日 (1984)昭和59年9月12日 |
信号符字 | JFMC |
船体番号 | 128115 |
IMO番号 | 8211502 |
総トン数 | 2,570 |
国際総トン数 | 2,891 |
純トン数 | 867 |
載貨重量トン数 | 1,456.20 |
満載排水トン数 | 4,729.90 |
全長(m) | 110.09 |
垂線間長(m) | 86.0 |
型深(m) 船楼甲板/上甲板 | 10.72/8.20 |
満載喫水(m) | 6.57 |
幅(m) | 13.8 |
主機関 メーカー・型式 原動機種/基 |
ダイハツ6DSMB-28NS ディーゼル/2基 |
プロペラ | 4翼FPP×2 |
定格出力(kW)/(PS) | 2,206/1,500×2 |
速力 最大/航海(k't) | 14.33/13.20 |
最大搭載人員(実習生定員) | 190(120) |
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