大成丸
平成26年、大成丸四世は、国内海上輸送を担う内航海運業界が待望する、即戦力となる優秀な新人船員を育成を育てるため、内航用練習船として三井造船株式会社玉野事業所において建造されました。
写真は、平成25年7月25日(木)、同事業所において、皇太子殿下のご臨席の下、練習船大成丸の命名・進水式が挙行された時のものです。
大成丸
大成丸の特徴
- 内航船の主要航路や港湾において訓練を行うため、水線下の船体は1,000トン型内航貨物船と同程度の大きさになっています。また、船橋からの視界や操縦の感覚を内航貨物船と類似させるため、海技教育機構の練習船として初めて船橋を中部に配置しました。
- 低燃費、低公害で、内航船で広く採用されている主機関を搭載しました。
- 好条件下であればタグボートの支援なしで離着岸が可能な舵、プロペラ、バウスラスタを搭載しました。
- 船橋及び機関室には、運航に必要な各種機器を搭載しつつ、20名程度の実習生グループが効果的に当直訓練を行える機器配置としました。
- 海技教育機構の汽船練習船の中で最もコンパクトな船体でありながら、分割可能な教室、演習室、甲板上のスペースなど、船内各所でグループ実習を行うことができます。
- 防火や救命に関する設備は、旅客船に準ずる仕様とし、十分な安全性を確保しました。
- 保健体育、諸行事の実施、諸作業、総員集合のために必要な広闊な暴露甲板を上甲板後部に確保しました。
- 機関室については可能な限り実習スペースを増大し、また制御室、演習室においても多人数教育の有効な実施を計画しました。
航海船橋及び実習船橋
航海船橋には、航海に必要なコンパス、自動操舵装置、レーダ、自動衝突予防援助装置(AutomaticRadar Plotting Aid: ARPA)、電子海図情報表示装置(ElectronicChart Display and Information System: ECDIS)などの機器を搭載しています。また、これらの情報を含む各種航海情報を表示し、操作できる多機能ディスプレイ(Multi Function Display: MFD)を4台備えています。航海中には昼夜を問わず実習生も班ごとに当直に入り、航海士の監督の下で航海当直の訓練を行います。このため、20名程度の実習生グループが当直訓練を行えるよう、機器配置及びスペースの確保に工夫がなされています。
航海船橋の階下にある実習船橋には、航海船橋の機器類を監視し、操作することができるよう、操舵スタンドや多機能ディスプレイ(MFD)などが設置されています。ここでは、実習生が当直航海士(教官)に頼らず、自分で判断をして船を運航する単独当直訓練を行います。単独当直訓練の間、航海船橋では、当直航海士が船の安全を確保すべく当直を維持しています。また、実習船橋の前面は、東京湾や瀬戸内海などを航行中に、主要な航路の通航方法について解説を受けながら見学できるよう、広いスペースを確保しています。
航海船橋
第一教室及び第二教室
海技教育機構の汽船練習船としては最もコンパクトな船体であるため、スペース有効活用の観点から、146名収容の第1教室は実習生食堂及び図書室を兼ねています。第2教室は120名を収容でき、実習生のグループサイズに応じて仕切ることにより、複数グループの実習を並行して行うことができます。
船内調度は青を基調色としていますが、第1教室は毎日使う場所であることから若々しく勢いのある色彩構成に、第2教室は専ら実習を行う場として、落ち着いた色彩構成にしました。
第一教室と第二教室
船体
国内輸送に活躍する内航船の船員を育成するため、内航船の主要航路を航行しながら訓練を行います。このため、水線下船体は1000トン型内航貨物船と同程度の大きさになっています。また、多くの内航貨物船の船橋が後部に配置されていることを考慮し、船橋からの視界や操縦の感覚を内航貨物船と類似させるため、海技教育機構の練習船として初めて船橋を中部に配置しました。
船底は二重になっており、万が一損傷を受けた場合でも沈没に至らない構造になっています。この二重になった船底部分には燃料や清水を蓄えており、船の安定を保つ役目も果たしています。
大成丸のタンク容量の合計は清水593立方メートル、燃料油466立方メートルです。また、船のバランスを調整するため、合計411立方メートルのバラストタンクが設置されています。このバラストタンクは、有害な生物などの移動による海洋環境への影響を避けるため、清水を船内で移動する方式としています。
端艇甲板
大成丸は屋上(羅針甲板)から地下(タンク上面)まで9階で構成されています。端艇甲板は5階にあたり、中央部には船への出入口がありタラップが設置されています。
前部には港に停泊する際に太いロープで繋ぐためのウインチがあり訓練に使用します。後部は人工木材を使用した木甲板とし実習で使用するとともに運動する場所としても使用できます。また、救命艇、船陸間を往来するための交通艇、オールを使用して漕ぐ訓練艇を搭載しています。居住区には船員の部屋や生活に必要な設備があります。
端艇甲板
推進
プロペラは4翼、直径3.50mの可変ピッチプロペラ(Controllable Pitch Propeller: CPP)です。プロペラを一定方向に回転させた状態で、翼の角度を変えることにより、前進から後進まで推力を自由に変化させることができます。
シリング舵は従来の舵の2倍の舵角にあたる左右70度まで取ることのできる性能を持った舵です。舵角を70度とすると、船尾を横方向に動かす力が得られるため、バウスラスタ(船首に設置された横移動用のプロペラ)を併用すると、船体は横方向に移動することが可能となり、離着岸など微妙な操縦の際に効果的です。
機関室
機関室には、主機(メインエンジン)と発電機を搭載しています。
3,000kW(約4,000馬力)・6気筒の4サイクルディーゼルエンジン1基を搭載しています。このエンジンは低燃費、低公害(IMO(世界海事機関)のNOx規制をクリア)で、環境にやさしく、内航船で広く採用されています。また、減速装置と可変ピッチプロペラ(CPP)の組み合わせで中型内航貨物船の平均的な航海速力である15ノットを発揮するとともに、出入港操船にも柔軟に対応できます。750kWの主ディーゼル発電機3基を搭載しています。航海中・停泊中は1基、電力消費の大きい出入港時には2基運転し船内のあらゆる場所に電力を供給します。調理もすべて電気で行います。
従来の蒸気ボイラに代えて、熱媒油ヒーター1基を搭載し機関室機器や暖房の熱源としています。熱媒油ヒーターは蒸気ボイラに比べ省エネ・省力化が可能で、内航船に広く搭載されています。
主機(メインエンジン)
機関室と煙突
機関室は船体中央付近に位置し、船首より機関制御室・工作室、発電機室、主機関室及び軸室から構成されています。それぞれの部屋は水密隔壁で隔てられており、隔壁には通行のための水密滑り戸が設けられています。機関室は機関の実習に最適なよう、騒音や振動の軽減対策がなされています。また、搭載している機器も実習生の教材として耐久性に富み、かつ、点検や整備が容易なものが採用されており、その配置や設置方法も実習に十分なスペースが確保できるよう工夫がなされています。
船に煙突はつきもので、各船会社が工夫を凝らしたファンネルマークから、船の「名刺」ともいえます。実際には主機関や発電機の排気ガスは機器毎に設けられた排気管から大気に放出さるため、煙突はこの排気管をカバーする「お化粧」です。大成丸の煙突には6本の排気管が納められており、後部甲板への排気ガスの影響を避けるため煙突から高くつきだしています。
機関室と煙突の構成図
操船シミュレータ、主機関シミュレータ
実際の運航場面で実物を操作する訓練は機会が限られるため、シミュレータを用いた訓練と複合して行うことができるよう、実習船橋にコンパクトな操船シミュレータ及び主機関シミュレータを備えました。これによりシミュレータで必要な技能の習熟を図りながら、実際の運航場面で実物を操作し、経験を重ねることができます。
搭載する操船シミュレータと主機関シミュレータは接続されており、両者を連携させたチームマネジメントなどの訓練を計画することも可能です。
大成丸の仕様
船名 | 大成丸 |
航行区域 | 遠洋 |
船種 | 汽船 |
建造場所 | 三井玉野 |
船番 | 1890 |
起工年月日 進水年月日 竣工年月日 |
(2013)平成25年2月14日 (2013)平成25年7月25日 (2014)平成26年3月31日 |
信号符字 | 7JPO |
船舶番号 | 141973 |
IMO番号 | 9687784 |
総トン数 | 3,990 |
国際総トン数 | 3,993 |
純トン数 | 1,197 |
載貨重量トン数 | 1,275.40 |
満載排水トン数 | 3,951.50 |
全長(m) | 91.28 |
垂線間長(m) | 80.0 |
型深(m) 船楼甲板/上甲板 | 9.00/6.45 |
満載喫水(m) | 5.122 |
幅(m) | 15.50 |
主機関 メーカー・型式 原動機種/基 |
新潟 6MG34HX ディーゼル/1基 |
プロペラ | 4翼CPP×1 |
定格出力(kW)/(PS) | 3,000/4,079 |
速力 最大/航海(k't) | 16.22/14.50 |
スラスタ(PS) | 449×1 |
最大搭載人員(実習生定員) | 176(120) |
お問い合わせ
総務部 総務課
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